【新CTOインタビュー(後編)】世界初に挑む技術チームとは?業界展望と楽天モバイルの未来を語る。

シャラッド・スリオアストーアは、2022年3月より、新たなCTOとして楽天モバイルの技術部門を統括しています。モバイル通信業界でキャリアを歩んできたスリオアストーアに、日本や世界のモバイル通信業界やコミュニケーションの未来についてインタビューしました。その内容を、前編・後編の二回に分けてご紹介します。

前編はこちら:
【新CTOインタビュー(前編)】27年間モバイル通信業界一筋のCTOが日本で世界初のプロジェクトに参画。目指すものとは?
https://corp.mobile.rakuten.co.jp/blog/2022/0615_01/

CTOとして、どのような技術チームを率いていますか?

スリオアストーア(以下略):仕事に情熱を持った人々が集まっています。多くの人たちが不可能だと言うことを達成するために互いを信頼し、共通のゴールに向かって働いています。リスクを恐れず、現状を打破し、未知の領域に踏み出すユニークな人材が集まっているのが、楽天モバイルの技術チームです。

私は、インクルーシブであることが強い組織を作ると考えています。ですので、楽天モバイルにおいて良いチームの条件は、メンバーそれぞれが、技術力の向上心、やり遂げるマインド、イノベーションへの情熱を持ってベストを尽しながら、チームとしてお互いの長期的な成長をサポートし合えることです。組織の目標達成のためには、それぞれのモチベーションを高めることが必要ですから、互いにリスペクトしながら自ら率先して行動することが重要です。技術チームのメンバーは、単に楽天で働く人と言うより、彼らが"楽天そのもの"であると考えています。

海外からエンジニアが日本に来て働くうえで、課題はありますか?

通常、外国人エンジニアにとって、言葉の壁がある日本は非常に働くことが難しい国です。しかし、楽天ではほとんどの人が英語を理解しますし、会議も英語で行われています。これは、グローバルに優秀なエンジニアを採用するためだけでなく、日本でのビジネス展開を考えている海外企業と仕事をするうえでも大きなメリットがあります。

現在、ネットワーク構築を70カ国・地域の人々が共に働き支えていますが、彼らがもたらす多様性は、イノベーションや新たなアイデアを集める面でも私たちの大きな強みとなっています。

楽天モバイルは、次の5年間でどうなっていくでしょう。

現在、4G人口カバー率は97%を突破しており(2022年4月時点)、エリアカバー率100%を目指して、サービスエリアを広げていきたいと考えています。

今後は、低遅延やネットワークスライシング(注1)、IoTサービスなどを提供することができる5Gが焦点となります。実際にNB-IoT(ナローバンドIoT)の研究開発を進めており、これは将来的に、様々な企業や消費者向けの新たなサービス提供につながるでしょう(注2)。

また、楽天モバイルの契約者増加に伴い、ネットワークの安定性を中心とした考え方から、顧客サービス中心の考え方へとシフトしていきます。最高の性能で最高のカバレッジを提供する必要があることに変わりないですが、それを実現したうえで、単なる接続性以上の充実した機能を提供することを目指します。

今後、モバイル通信業界を変革する技術としては、どのようなものが考えられますか。

「自律ネットワーク」は中期的な重要分野の一つと言えます。

私たちは完全な自律ネットワーク、すなわち自動運転車のように、オペレーション不要あるいは技術者不在のネットワークの実現を目指しています。人の手を介さず、自動的にカスタマーエクスペリエンスを向上させるにはどうすればいいか、また、AIや機械学習を使ってお客様の行動を把握しつつ、ハードウェア側でもネットワークに問題が起きそうなことを積極的にモニターするにはどうすればいいか、このような問いへの答えを探しているところです。

通信において、仮想化やクラウド化の技術は、すでにあらゆるところで使われています。無線アクセスネットワーク(RAN)に適用することには時間がかかりましたが、今では業界内でのデフォルトになりつつあります。これにより、ネットワークの運用を完全に自動化することができ、非常に柔軟な対応が可能になります。

今日、ハイパースケーラーと呼ばれる企業でさえ通信領域に参入しています。彼らもここに未来があると見込んでいるのです。ハイパースケーラーの関係者の多くもどんどんモバイル通信業界に来ています。通信が重要視される傾向は今後も続くでしょう。

 

先進技術を採用することは、お客様にとってどのようなメリットがありますか?

お客様の技術理解度が深まっており、楽天モバイルがどのような技術でサービスを提供しているのか、強い関心を持たれています。最も重要となるのはサービスエリア、データ通信の利用容量、利用率(アベイラビリティ)、通信のパフォーマンスです。楽天モバイルは、Open RAN、vRAN(仮想化RAN)、クラウドネイティブなどの先進技術を採用することにより、設備投資を削減し、その分をユーザーに安価な料金プランとして還元しています。

料金以外にも、お客様にとってメリットとなるのは、新しいサービスを提供するスピードです。私たちのプラットフォームは、新しいテクノロジーへの対応をより早く、スムーズに行うことが可能です。4Gから5Gへの移行のように、従来の方法だと時間がかかるところ、比較的早期に5Gを展開することができたというのはその一例です。6Gへの移行時は、単純にソフトウェアの問題となるでしょう。基地局に直接出向かなくても、遠隔でアップグレードすればいいのです。このように新しい技術を迅速に適用できることも、お客様にとってメリットと言えるでしょう。

料金プランは楽天モバイルの最大の強みだと考えていますか?

先ほど挙げたお客様が携帯キャリアを選ばれる際に重要視されるものに加え、月額利用料金は重要な要素です。楽天モバイルが携帯キャリアとしてサービスを開始する前、日本の平均スマホ料金はとても高額でした。しかし現在では、どの通信事業者も安価な料金プランを提供し、平均金額は大幅に下がっています。平均スマホ料金は以前より60%以上下がったというデータも出ています(注3)。お客様は、より多くのデータ量をより安価で利用できるようになったのです。これは、"日本のモバイルネットワークの民主化"という私たちのビジョンが実を結びつつあると言えると思います。

先日発表した新たな料金プランは、シンプルなだけでなく、楽天エコシステムのメリットをより感じていただきやすいものになっています。また、楽天モバイルのネットワーク性能は、様々なグローバル第三者機関から世界最高レベルであるという評価を受けており、強みの一つになっています。

技術の進歩は、通信をより地球環境に優しいものにすることも可能ですか?

もちろんです。気候変動への影響を軽減する方法はたくさんあります。楽天モバイルなら、基地局設備を簡素化しているため、基地局設置にトラックで現地に赴き2日かけて建設するのではなく、電車で小さなユニットを運んでプラグを差し込んで設置するというアプローチも取れます。

最先端の技術を駆使して電力効率を高めることはもちろんですが、もうひとつの大きなポイントは自動化です。完全自動化は、消費電力だけでなく、人的な効率も大幅に向上させることができます。

低軌道衛星で日本全土を100%カバーすることを目指していますが、いつ頃実現しますか?

この計画は大きく前進しています。パートナーである米・AST SpaceMobile(AST)は、多くの衛星の打ち上げを予定しています。我々のソフトウェア要件をどのように満たせるか、挙動が安定しているか、遅延や侵入テスト等、近いうちに実証実験を予定していて、楽しみです。

この技術は当社のIoTサービスにも大いに応用が期待できると思っています。企業から消費者向けまで、実に多くの応用が考えられます。

現在、日本では人口カバー率を拡大していますが、ASTの実証実験が成功すれば、日本の山岳地帯や離島も含めたすべてをカバーするエリアカバー100%を達成することができます。そうなれば、楽天モバイルにとって大きな優位性になると考えています。

 

スリオアストーアさん、ありがとうございました!

※タイトル:楽天モバイルは、世界初の完全仮想化されたモバイルネットワーク構築を実現しました。大規模商用モバイルネットワークとして(2019年10月1日時点)/ステラアソシエ調べ
(注1)ネットワークスライシングについては、こちらのブログをご参照ください:【技術解説】5Gで本格化する「ネットワークスライシング」とは?楽天モバイルが進めるモバイルネットワークの研究開発をご紹介します 
(注2)NB-IoTとは、狭帯域・低電力化を推し進めたIoT機器向けの通信規格です。非常に狭い周波数帯域を使用することで、少量のデータ通信を低頻度で送信でき、スマートメーターやセンサーなど、より低消費電力を求めるIoTサービスへの活用が期待されています。
(注3)出典:総務省(2021年5月)各都市でシェア1位の事業者で4Gを月20GB利用した場合の価格を元に比較。

 

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