世界が注目する、楽天モバイルとNECが展開する5G無線機

この記事は、世界初となるエンドツーエンドの完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワーク(注1)構築にむけた、楽天モバイルとパートナー企業との協業にスポットを当てた連載の一部です。今回は、日本電気株式会社(NEC)シニアエグゼクティブの渡辺 望氏にお話を伺いました。

「楽天モバイルとNECは協業を通じて世界初の試みを達成しました。オープンで完全仮想化されたアーキテクチャに基づく5Gモバイルネットワーク無線機(Radio Unit、以下「RU」)を構築したのです。この高性能なRUは、様々なパートナーのネットワーク機器と組み合わせて使用することができ、楽天モバイルが開始する5Gサービスにとって、重要な役割を担います。

この画期的なRUは、NECの福島工場で生産が進められており、その第一弾の出荷は2020年3月に完了しました。オープンアーキテクチャの完全仮想化ネットワークを展開することで、楽天モバイルは従来の携帯キャリア事業者と比較してモバイルインフラ整備に関する投資コストを大幅に削減することを目指しています。仮想化ネットワークは、ソフトウェアをハードウェアから切り離すことで柔軟性が高いという特長があります。NECは、楽天モバイルの仮想化無線アクセスネットワーク(vRAN)用のソフトウェアを提供している米マサチューセッツ州のAltiostar社と緊密に連携をとりながら事業を進めています」と渡辺氏は語りました。

楽天モバイル代表取締役副社長兼CTO(最高技術責任者)である Tareq Aminはこのように説明しています。
「ネットワーク技術とIT技術の融合をリードする企業として、NECは世界初となるエンドツーエンドの完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワーク構築という楽天モバイルのビジョンを実現するうえで、計り知れない重要な役割を果たしています。NECの5GRUは、今まさに、楽天モバイルの最初の基地局に設置されているところです。これによりユーザーは、コスト効率と安全性が高く、高品質な5G接続を利用できるようになります。楽天モバイルは企業と消費者の双方にエキサイティングな新サービスを提供できるようになります」

横浜で開催されたイベントRakuten Optimism 2019で講演するNECの渡辺 望シニアエグゼクティブ

「楽天モバイルは、4GネットワークのvRANに関連する数々の挑戦課題にすでに取り組んできたため、そのノウハウを5GオープンRANシステムの構築に生かすことができます」と渡辺氏は説明します。

世界の注目が集まる

世界中の携帯キャリアが、オープンで仮想化された無線ネットワークのメリットを見極めようと、楽天モバイルのネットワークの本格開始を注視しています。
渡辺氏は「仮想化されたRANアーキテクチャの導入に興味をもっている事業者はたくさんいます。しかし、彼らは導入に先立って楽天モバイルのネットワークが機能するのを確かめたいと思っているのでしょう」と話しました。

NECは、楽天モバイルとの協業で得たノウハウを海外展開していきたいと考えているそうです。
渡辺氏はこのように説明しました。「仮想化されたネットワークが機能することを潜在的な顧客に示すうえで、非常に重要なタイミングを迎えています。楽天モバイルのネットワークがサービス提供を開始した後、日本国外での新たなビジネスチャンスを期待しています」

複数のベンダーに対応した新しい仮想化オープンアーキテクチャは、これまで少数の企業によって独占されてきたネットワークインフラ市場を民主化し、競争を作る環境を生み出すことができるのです。
「他のベンダーが提供しているネットワークに代わる、もうひとつのネットワーク。これらに対する期待値は高いです」と渡辺氏は語りました。

Massive MIMOやビームフォーミングなどの5G技術に数年前から取り組んできたNECは、当初、日本政府との共同プロジェクトの一環として複数のフィールドテストを実施。その後、NECが楽天モバイル向けの商用RUを開発するまでに1年を要しました。

多様で活気のあるエコシステム

楽天モバイルはモバイルネットワークを構築するにあたり、世界中の様々なサプライヤーを取り巻くオープンなエコシステムを育成しています。楽天モバイルは、そうしたパートナーたちと緊密に連携をとりながら楽天モバイルプラットフォームを構築し、それを自前の5GネットワークにOpenRANソリューションを用いたいと模索している他の通信事業者に提供します。

楽天の5Gサービス開始にあたっては、オープンで完全に仮想化されたアーキテクチャに基づく5GモバイルネットワークのRUが重要な役割を担う

NECの新しい5GRUは、楽天モバイルが4Gネットワークにオープンアーキテクチャを構築するために行ってきた作業を土台に構築されています。2019年10月、楽天モバイルはOpenRAN仕様に基づく世界初のアーキテクチャによって商用サービスを開始しました。
渡辺氏はこのように話しています。「AltiostarとのOpenRANインターフェースはすでに制定されていたので、それが役立ちました。OpenRANはオープンなインターフェースをもっていますが、他のベンダーの機器と組み合わせて動作させるためには、いくつかのオプションを選択しなければなりません。しかし、接続を確立するための基礎としては十分なもので、Altiostarとの組み合わせにおいてもスムーズに接続ができると確信しています」

新製品の5GRUは、3.7GHz帯で動作するMassive MIMOアンテナを搭載しながら、小型・軽量・低消費電力を実現しています。NECは、これらのユニットのコストを抑えつつ、高い品質を維持することに注力してきました。
渡辺氏は「非常にコンパクトな機器でありながら、高品質なパフォーマンスを実現しており、楽天モバイルが商用システムに求めていたものとマッチしています。私たちは楽天モバイルと共同してコスト削減に取り組み、製造システムの自動化により、人件費も最小限に抑えられました。また、システムを極力シンプルなものにすることで、なるべく簡単に組み立てられるようにしました」とコメント。

新しい周波数が割り当てられて、より多くの帯域幅が利用できるようになった際には、NECと楽天モバイルは5GRUのアップグレードと拡張を計画しています。
「ベースとなる技術は共通していますが、パフォーマンス面で取り組むべきことが増えます。それは概ねハードウェアで制御される部分です」と渡辺氏は説明します。

楽天モバイルは既存のネットワークを持っていないため、通信インフラのルールブックを覆して新たなスタートを切ることができました。NECでは、5Gが成熟するにつれて、多くの通信事業者が楽天モバイルと同様のアーキテクチャを採用することになるだろうと予測しています。

NEC執行役員常務・ネットワークサービスBU担当の河村厚男氏は言います。
「NECは今後、楽天モバイルとともに仮想化ネットワークアーキテクチャのグローバル展開を推進していきたいと考えています。オープンな5Gエコシステムを拡げていくことで、NECは世界各地で新しいモバイルサービスの創出に貢献していきます」

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