【技術解説】クラウドとは何か楽天モバイルのエンジニアに聞いてみました(後編)
この【技術解説】シリーズは、楽天モバイルのネットワークに導入しているテクノロジーや今後注力していく分野について解説する連載記事です。
今回は、前回掲載した「クラウドとは何か楽天モバイルのエンジニアに聞いてみました」の後編です。前編に続き、楽天モバイルのクラウド&ネットワークプラットフォーム本部 副本部長である壬生亮太(みぶ りょうた)さんに楽天モバイルのネットワークが稼働するインフラである「クラウド」についてお話を伺いました。
楽天モバイルのクラウドインフラは、3つの中央データセンターによって支えられています。多数のサーバーが設置されているデータセンターは、ネットワークの基幹網である「コアネットワーク」機能と、チャットやビデオストリーミングなど、ネットワーク上で実行されるサービスを運用しています。地震などの自然災害により、中央データセンターの1つがダウンした場合、ほかのデータセンターがその機能を引き継ぎ、ネットワークを運用する仕組みになっています。
5Gを活用して顧客に近づく
5Gを見据えて、楽天モバイルでは、電波を発射する基地局などの無線アクセスネットワークをサポートするため、約50の地域データセンターを展開し、お客様に利用いただくアプリケーションが不自由なく稼働できるように準備しています。「5Gは、コラボレーションが重要で、ビジネスの可能性を広げるものです。超低遅延と大容量・超高速接続の機能を利用することで、オンラインゲームなどの一部のサービスは地域データセンター上で稼働するようになると考えられます」と壬生さんは説明します。
これらのサービスを地域データセンターで実行すると、中央データセンターでサービスを実行する場合と比較して、待機時間(アプリケーションの応答にかかる時間)を大幅に短縮できます。
また地域データセンターは、何千もの「ファー・エッジ」(注1)にあるデータセンターに支えられています。これらは「エッジデータセンター」と呼ばれており、サーバーで構成された小さなクラスターが、各基地局が受信したデータを処理し、それを地域データセンターや中央データセンターに中継しています。
楽天モバイルを含むクラウドをインフラとしてサービスを提供する企業にとっての課題は、中央集権型とエンドユーザーの近くにインフラを配備する分散型とのメリットを比較し、どうバランスを取るかです。分散型アプローチを取ると、ネットワークにおけるサービスの応答性を高めるだけでなく、ある組織からのまとまったトラフィックが中央データセンターに集中する際に発生する帯域幅のボトルネックを軽減できます。
標準化とシンプルさの美学
規模や役割は大きく異なりますが、3種類のデータセンターは同じ標準化されたアーキテクチャによって統合されています。「中央データセンターからエッジデータセンターまでプラットフォームを標準化するという美学は、そのシンプルさにあります。これにより、追加のエンジニアや試験が不要になります」と壬生さんは話します。
楽天モバイルのクラウドアーキテクチャのシンプルさと均一さにより、ネットワーク管理を自動化しやすくなります。
楽天モバイルでは、ベンダー企業にクラウド上でネットワークを任せて運用するのではなく、経験豊富なエンジニアを自社で採用し、「DevOps(注2)」と呼ばれる開発作業を行っています。DevOpsでは、従来垣根のあったソフトウェア開発と運用の境目がぼやけていきます。このアプローチを取ることで、エンジニアは、クラウド環境で新しいコードを開発することができ、開発と運用で2つのドメインを分離した場合よりもスピーディーな改善が可能になります。結果、楽天モバイルは、携帯キャリアでは一般的な約6ヶ月間の新機能追加サイクルを約6日間にまで大幅に短縮しています。
楽天モバイルのクラウド開発について、壬生さんは「楽天モバイルでは、スピーディーな開発、運用、実用化を行い、継続的な改善を続けています。リアルなDevOps環境で経験を積みたい開発者にとって、当社は最適な環境だと思います。クラウド部門は急速に拡大しており、さまざまな経験やキャリアを積める場です」と話しています。
(注1)遠隔という意味。モバイルネットワークではよりお客様に近い場所を指します。
(注2)DevOpsとは、ソフトウェア開発方法の1つで、開発(Development)チームと運用(Operations)チームが連携・協力して、スピード感をもってシステムの開発・運用に取り組むこと。
低価格・高品質なサービスを実現した秘密は、
完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワーク。