【成果レポート】産官学で挑んだ「混雑緩和」、成功から導かれる新たな可能性

楽天モバイルは国立大学法人 神戸大学(神戸大学)、株式会社デンソーテン(デンソーテン)と協力し、2021年10月よりノエビアスタジアム神戸(ノエスタ)において、5Gを活用したイベント時の混雑緩和に向けた方策の検討やイベント会場周辺の経済活性化を目指す実証実験を行いました。本記事では、その概要と実証実験を終えた関係者へのインタビューをご紹介します。

混雑緩和の実証実験とは?

ノエスタでは、イベント終了後における会場から最寄り駅までの帰宅者による混雑が神戸市の地域課題となっていました。また、事前の調査により、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から、ノエスタの来場者がイベント終了後の会場内や帰宅時の混雑に不安を抱いていることが分かりました。

アプリ画面イメージ

実証実験は、神戸市が公募した研究活動助成プロジェクト「大学発アーバンイノベーション神戸(令和2年度)」にて採択された研究開発の一環として実施したものです。実証実験では、来場者に専用のスマートフォンアプリをインストールしてもらい、ライブ配信の映像によって、アプリ上でスタジアム内の混雑状況が分かるようにしたほか、帰宅時に利用する交通機関の混雑状況をリアルタイムに確認できるようにしました。また、クイズゲームで遊べる機能や会場内で待機しているとアプリ専用のポイントが貯まり、ヴィッセル神戸のグッズと交換できるという、試合終了後に来場者を会場内に留める施策も実施しました。貯まったポイントをスタジアム周辺の飲食店などでクーポンとしても利用できるようにすることで、スタジアム周辺での回遊性を向上させる施策も実施しました。

実証実験においては、楽天モバイルの5Gネットワークを使用し、デンソーテンが来場者用のスマートフォンアプリの開発や近隣店舗との連携を行いました。神戸大学はアプリユーザーへ情報をどのように伝えるか検討し、3者から総勢30名以上のメンバーがプロジェクトに携わりました。

実証実験の内容について、詳細はコチラ
https://corp.mobile.rakuten.co.jp/news/press/2021/1006_01/

 

 

プロジェクトメンバーへインタビュー

今回はこの産官学で挑んだ「混雑緩和プロジェクト」の成果や、今後の展望について、楽天モバイルの益子 宗さん、工藤 亮さん、神戸大学の寺田 努さん、福間 愛富さん、デンソーテンの田中 真一さん、三谷 将哲さんにお聞きしました。

お話を伺った楽天モバイルのプロジェクトメンバー

    • 益子宗さん

      楽天モバイル 

      5Gビジネス本部 ビジネスソリューション企画部

      部長

    • 工藤亮さん

      楽天モバイル 

      5Gビジネス本部 サービス企画課

    • 寺田努さん

      神戸大学大学院

      工学研究科

      教授

    • 福間愛富さん

      神戸大学大学院 

      工学研究科 塚本・寺田研究室

    • 田中真一さん

      株式会社デンソーテン 

      新事業推進本部 イノベーション創出センター

      プロジェクトリーダー

    • 三谷将哲さん

      株式会社デンソーテン 

      新事業推進本部 

      事業企画室 事業推進課

実証実験で工夫したことや、そこから得た成果を教えてください。

福間さん(神戸大学):
今回はサッカーの試合(ヴィッセル神戸のホームゲーム)における検証であり、アプリの対象ユーザーは会場へ応援に来る熱狂的なサポーターの方々が中心です。そのため、負け試合では早くスタジアムから離れる傾向にあるなど、試合状況や試合結果によって来場者の行動も大きく変化する場合があります。アプリを通じてユーザーに届ける情報を試合状況に応じて変更し、ユーザーによって情報提供に差をつけるABテスト等を多く実施してきました。

5日間の実証実験でアプリはのべ2,000人ほどの方にインストールしていただきました。位置情報から、アプリユーザーはアプリを使用していない人に比べ、試合終了30分後、3割程度多くの方が会場に残っていたという結果が出ました。また、アプリ内のアンケート機能により、会場内における混雑度の体感についてユーザーに調査したところ、他の同規模のイベントに比べ、ユーザーが体感する混雑度が低いことが分かりました。

寺田さん(神戸大学):
今後、このようなアプリの使用が普及し、来場者がイベント終了後にアプリを立ち上げるようになれば、より混雑緩和に寄与し、コロナ禍においても安全に会場から帰ることができるようになるのではないかと思います。

スタジアム周辺にライブカメラを設置し、アプリユーザーに混雑状況を発信

実証実験で苦労したことはありましたか?

三谷さん(デンソーテン):
当社はこれまで車載機器を中心に開発してきた会社ですが、今回のようなエンドユーザー向けアプリ開発など、新たな取り組みでは知見がない部分もあり苦労しました。例えばユーザーへの混雑情報の見せ方において、神戸大学を中心に心理学的な観点からご助言いただき大変助かりました。

寺田さん(神戸大学):
一人でも多くの来場者に実証実験にご参加いただくため、アプリのインストール手順を記載したチラシを作り、会場内で配布を行いました。会場スタッフと間違えられてプロジェクトと関係のない質問を受けたときは焦ってしまいましたが、良い経験になりました。

工藤さん(楽天モバイル):
アプリユーザーが、スタジアム内とその周辺の混雑状況を常にリアルタイムで確認できるように、ライブカメラ映像を安定して配信し続けなければなりません。途切れることなく映像を届けるために動画配信のテストを何度も重ね、実証実験では楽天モバイルの5G通信も使いながら安定した配信を実現しました。

益子さん(楽天モバイル):
今回は、スタジアムのメインエントランス前やグッズ売り場、コンコースなど計5箇所にカメラを設置しました。今後、より多くの場所にあるライブカメラ映像を安定的に配信するためには、ネットワークスライシング(注)により、動画配信のための専用の帯域を確保する必要があります。

ヴィッセル神戸のグッズ売り場内の柱にライブカメラを設置する福間さん

 

 

今回の実証実験は産官学連携の実施となりましたが、連携のメリットを教えてください。

寺田さん(神戸大学):
楽天モバイルの益子さんとは10年来の付き合いで、大学の研究者と近い立場で議論をすることができます。今回の取り組みも検討のきっかけは、益子さんから声をかけていただいたことでした。そこにデンソーテンが加わり、神戸市やヴィッセル神戸の多大な協力を受け、大学だけでは実施が難しい規模やスピードで実証実験をすることができました。

三谷さん(デンソーテン):
楽天モバイルの5Gに関する知見や取り組み、また楽天グループのアセットの活用など、我々が取り組むMaaSビジネスをはじめ様々なフィールドにおいて、今後のさらなる連携の可能性を感じています。また、神戸大学のエビデンスに基づいた経験豊富な研究知識を活かすことができたからこそ、地域課題である混雑緩和の解決に向けて前進できたと思っています。

工藤さん(楽天モバイル):
今回のプロジェクトを進める中で、神戸大学の学術的な知見やデンソーテンの技術的な強みを楽天モバイルの5Gネットワークソリューションと組み合わせることで、5Gにより提供されるサービスの付加価値が向上していくのだと強く実感しました。

今後の取り組み予定を教えてください。

寺田さん(神戸大学):
今回の取り組みをスタジアムだけにとどめず、神戸市のまちづくりに取り組みを広げ、社会貢献につなげていきたいです。

田中さん(デンソーテン):
神戸市において、人の流れを無理なくコントロールすることで人々の回遊性を上げることが課題の一つになっています。特定の場所に人を密集させるのではなく、人々が自然に街を回遊するための移動に関わるサービスに携わっていきたいです。

工藤さん(楽天モバイル):
今回の取り組みはサッカーだけでなく、他のスポーツの試合、またコンサートなどの音楽イベントをはじめ、様々なシーンに応用できると考えています。今後も安心安全なインベント実施に役立つような5Gを活用したソリューション提供を目指します。

 

最後に、この取り組みに支援をいただいた神戸市と楽天ヴィッセル神戸の担当者からのコメントをご紹介します。

神戸市へ実証実験の成果を報告するプロジェクトメンバーの皆さん

神戸市 企画調整局 連携推進担当部長 藤岡 健さん:
「今回の実証実験を通じて、神戸市の社会課題である大規模スタジアムでの『イベント時の混雑』を新たな技術を用いて緩和することが可能だと分かりました。今後は、この成果を活用してアプリの機能拡充を行うなど、さらに市民の皆様にとって利便性の高いサービスを創出できるよう、大学や企業と連携していきたいと考えています」

楽天ヴィッセル神戸 事業本部 営業部 椋木 聖智さん:
「試合開催日のノエスタ周辺の混雑については、ヴィッセル神戸としても同様に課題認識がありました。その中で今回の実証実験では「分散帰宅をお願いします」といった従来のアナウンスやお声掛けではなく、アプリを通じてお客様にお得にかつ楽しんでご参加いただきながら、課題にアプローチすることができました。今後もヴィッセル神戸のホームゲームにご来場いただけるお客様に少しでも快適にご観戦いただけるよう、大学や企業とともに取り組んでまいります」

(注)ネットワークスライシングとは、サービスに応じてモバイルネットワークを仮想的に分割してスライスとして運用する技術です。

 

 

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