【新CTOインタビュー(前編)】27年間モバイル通信業界一筋のCTOが日本で世界初のプロジェクトに参画。目指すものとは?

シャラッド・スリオアストーアは、2022年3月より、新たなCTOとして楽天モバイルの技術部門を統括しています。モバイル通信業界でキャリアを歩んできたスリオアストーアに、日本や世界のモバイル通信業界やコミュニケーションの未来についてインタビューしました。その内容を、前編・後編の二回に分けてご紹介します。

■プロフィール

Sharad Sriwastawa(シャラッド・スリオアストーア)

楽天モバイル株式会社 CTO(Chief Technology Officer)兼 楽天グループ株式会社 常務執行役員

モバイル通信業界において、長年、技術分野の要職を歴任。5G、4G(LTE)ユニバーサルモバイル通信システム(UMTS)、無線周波数(RF)、無線アクセスネットワーク(RAN)エンジニアリングに精通。楽天モバイル入社以前は、23年間にわたり米国、中東、アジア全域において経営やネットワークシステム開発に従事。2018年9月より楽天モバイルにて無線アクセスネットワークの構築を指揮。現在はCTOとして、楽天モバイルのネットワーク開発・運用を担当している。

モバイル通信業界でキャリアをスタートさせたきっかけは?

スリオアストーア(以下略):私が子どもの頃、故郷のインドではまだ固定電話が普及しておらず、通信はとても魅力的な分野でした。携帯電話もインターネットもなく、コミュニケーションが取りづらいという課題があったため、大学で電気通信を専攻するだけでなく通信業界で働きたいと思うようになりました。幸いなことに、私は最初の仕事でインド初のモバイルネットワーク構築に関わることができ、1995年にムンバイで初めてGSM(Global System for Mobile Communications)方式で通話をしたことを覚えています。GSMのことを“God sent Mobiles”(神が送った携帯電話)と呼んだりしていました。

以来、私はオーストラリア、タイをはじめアジアやヨーロッパ各地、アメリカでモバイル関連の仕事をしてきました。そこで出会ったのが楽天モバイルの現CEOであるタレック・アミンです。2018年に、楽天の新たなネットワーク立ち上げ準備に関連して日本に来ました。世界初となる完全仮想化されたモバイルネットワーク構築(注1)というチャレンジに感化され、私はこの国が大好きになり、その年の夏の終わりには楽天モバイルに参画するため、家族と日本に移り住みました。

ゼロからネットワークを構築するうえで、どのような苦労がありましたか?

楽天モバイルが採用しているOpen RANベースのモバイルネットワーク構築は、容易なものではありませんでした。多くの人が無理だと言ったことがかえって私たちのモチベーションを高め、原動力になりました。時には手探り状態なこともありましたが、モバイル通信業界のスタートアップを巻き込み、楽天グループの行動規範のひとつでもある「GET THINGS DONE」の精神で、物事を成し遂げるための対応力と柔軟な考え方も得られたと思います。

「4G人口カバー率96%」の目標(注2)は、当初2026年までの達成を目指していました。約4年前倒しで達成できた理由は?

複数の要因があったと思います。一つは、Open RANを採用したことです。Open RANは、技術的なメリットもさることながら、運搬面でのメリットも大きいのです。基地局設備は最小限なので、用地確保や建設をスムーズに進められます。

私がモバイル通信業界でキャリアを始めた27年前は、一つの基地局を設置するのにも委託や構築に数日かかり、熟練したエンジニアチームが必要でした。それがOpen RANであれば、Wi-Fiのように簡単に設置できるのです。すでに多くのシステムを統合したため、今ではエンジニアを一人も現場に派遣することなく、2〜3時間で完了できます。

もう一つは、楽天グループの総力を結集して基地局建設を行ったことです。楽天市場、楽天トラベルや楽天カードなど、グループ会社が日本各地のパートナー企業と築いた関係性は、基地局建設を格段に容易にしてくれました。

MWC 2022のGLOMO Awardで「ベスト・ネットワーク・ソフトウェア・ブレイクスルー」を受賞しました(注3)。評価されたのはどういう点ですか?

今回の受賞は、当社が開発した非常に柔軟なOpen RANプラットフォームが、5Gの設計から導入、拡張まで極めて効率的に行えている点が評価されたものと思っています。サービス開始当初から5Gネットワークの基盤は完全にコンテナ化・マイクロサービス化されています。

私たちは、Open RANのクラウドネイティブネットワークを使って商用サービスを提供した初の携帯キャリアであり、今回の受賞は、モバイル通信業界に対して技術的な確証をさらに示せたと思います。

 

楽天モバイルのビジネスモデルは世界でも通用するのでしょうか?

現在私たちは、日本で楽天モバイルがゼロからネットワークを構築し、実際にお客様にサービス提供するまでの経験で得た技術や知見を、世界中の通信事業者にプラットフォームとして提供する事業も進めています。グループ会社の楽天シンフォニーが、「SymworldTM(シムワールド)」という通信プラットフォームを世界へ展開するというビジネスモデルを構築し、大きな可能性があると考えています。楽天シンフォニーは、すでにドイツの新規参入モバイル事業者である1&1と契約しています。

SymworldTMは、現代の通信事業者が、高度で安全かつ高品質なネットワークを計画、構築、運用するために必要なすべてを一つに集約して提供する革新的なプラットフォームです。お客様に、今までにないレベルでの業務効率とサービス品質、イノベーションへの最善かつ最短ルートを提供できるものと言えるでしょう。

SymworldTMのコンセプトはユニークで、通信事業者のオペレーションに一貫性やインテリジェンス、ゼロタッチの自動化をもたらすというものです。世界が注目している新しいネットワークには、新しいオペレーティング・プラットフォームが必要です。通信事業者の未来がここにあります。私たちは、前例のない道を歩んでいますが、確信も持っています。

※Symworldは、シンガポールおよびその他の国における楽天グループ株式会社またはその子会社の商標です。

(注1)大規模商用モバイルネットワークとして(2019年10月1日時点)/ステラアソシエ調べ
(注2)屋外基地局による夜間人口に対する人口カバー率。人口カバー率は、国勢調査に用いられる約500m区画において、50%以上の場所で通信可能なエリアを基に算出。
(注3)GSMA Announces 2022 GLOMO Awards Winners   https://www.gsma.com/newsroom/press-release/gsma-announces-2022-glomo-awards-winners/ (英語のみ)

 

後編に続く


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