佐藤可士和さんクリエイティブディレクション・楽天モバイルショップの内装が、モバイル業界初「意匠登録」されました!
楽天モバイルは、接客をシームレスにしてお客さまに威圧感を与えることなく、ショップスタッフ「R CREW」と親しみをもった接客を実現した、シンプルで新しいスタイルの楽天モバイルショップを全国に展開しています。
2021年3月9日に、モバイル業界で初めて、楽天モバイル恵比寿店と京都四条通店の「内装の意匠」が「意匠登録」されました(注)。このブログでは、今回の意匠登録に際し、クリエイティブディレクションをしていただいた佐藤可士和さんに楽天モバイルのショップの内装デザインの特徴についてコメントをいただくとともに、意匠登録に携わった楽天モバイル知財部担当者・古庄のインタビューをご紹介します。
新たに始まった「内装の意匠」登録とは?
2019年5月に独創的で美感を有する物品の形状、模様、色彩等のデザインを保護する「意匠法」が大幅に改正され、2021年4月から新たに建築物や内装のデザインも保護対象に加わりました。これまでは「物品の意匠」のみが対象とされていましたが、この「意匠法」の改正によりインテリア(内装)等の複数の物品の組み合せや配置等が全体として統一的な美感を起こさせるものも、一つの意匠として意匠権での保護対象となりました。
今回の意匠登録では、楽天モバイルショップの内装(インテリア)デザインで4点の独自性が認められました。
(1)接客に使用するカウンターにより店舗フロアが分断されていない点
(2)接客カウンターの対面に大型ディスプレイが複数枚配置されている点
(3)接客カウンターの側面壁にアクセサリ陳列ボートが配置されている点
(4)これらの構成が全体的にまとまり、内装化されている点
佐藤可士和さんが考える「Simple・Digital・Flexible」を求めた新しい店舗デザインとは?
新しい店舗デザインは、携帯電話ショップにおけるユーザー体験を一新するため、楽天のロゴデザインも手掛けた同氏監修のもと、社内外連携のデザインプロジェクトで生まれました。
自由な店内回遊を実現
佐藤さん(以下略):店内は「Simple・Digital・Flexible」をコンセプトに設計し、お客様とR CREW(楽天モバイルショップの販売スタッフ)との垣根をなくした開放感のある空間にしました。
モバイルショップというと、店内に入ってすぐに受付をし、決まったスペースで相談や手続きをします。この動線は効率的ではありますが、同時にお客様の動きを自然と制限し、スタッフとお客様のコミュニケーションも断片的になりがちです。
そこで考えたのが、お客様の自由な店内回遊を可能にする空間デザインです。完全分離ではなく、重なり合った店内ゾーン区分にすることで、お客様が滞在するゾーンを決めてしまうのではなく、お客様自身に見たいものや契約したい場所を選んでいただくスタイルを実現しました。また、大型ディスプレイなどのデジタルテクノロジーを最大限に活用することで、お客様が自分に必要な情報を集めることのできる空間を提供しています。
シンプルであること
デジタルを活用しペーパーレス化することは、売り場に余計なものを置かないシンプルな空間づくりにもつながっています。これまではポスターなどが多く貼られていた壁もすっきりとさせ、接客カウンターの側面壁にはアクセサリの陳列ボードを配置することで、シームレスな接客を可能にしています。シンプルな空間は自由な店内回遊を可能にするだけではなく、主役である商品を際立たせる効果もあります。
その点では、インテリアのディテールにもこだわりました。ファサード、テーブル・椅子の脚などは、光が反射しないステンレスを使用し、展示台やカウンターの脚は極力細くすることで主張を抑え、空間に溶け込むように考慮しました。
また、モルタルの内装、テーブルや椅子を白でまとめた無垢な空間のなかで、ブランドカラーであるマゼンタをサイネージで表現することによって、ブランドのアイデンティティを強く打ち出すような演出もしています。
変化可能な店舗デザイン
ネットでスマホが購入できるこの時代、リアルな店舗であることの意味を考えたときに、お客様やビジネスのニーズによって変化可能な店舗デザインが必要だと考えました。テーブルの高さ、座席数の変化だけではなく、従来型の場所や数が固定されてしまっている什器の使用を避けることによって、店内状況に応じた最適な店舗をつくることができます。
「内装の意匠」の出願を担当した楽天モバイル知的財産部の古庄にインタビュー
内装の意匠を出願したきっかけは?
恵比寿店の開店と内装の意匠登録が始まるのが同じ年でした。そこで、なんとか意匠登録が始まるタイミングで出願できないかと準備を始めました。内装意匠出願にあたって、奇跡的なタイミングで我々の店舗のコンセプト設計も出来上がり、手続きをしました。
これまで知財部ではオリジナルデバイスの意匠登録なども手がけてきたと思うのですが、対象物が建物になったことで苦労されたことはありますか?
手続き自体は同じなので戸惑いは全くありませんでしたが、デザイナーが作成した設計図を出願用の図面に変換する際には、内装に関するデザインであるだけに工夫が求められました。図面に色を付けたり、テクニカルなことを代理で出願してくれる特許事務所とコミュニケーションをとりながら準備を進めました。
保護対象となることでの利点は何ですか?
まず、他社に対して似たような商品が発売されたときに、権利行使ができます。デザイナーにとって、自分たちが苦労して考えたデザインは権利として保護したいという思いが普遍的にあるので、そのニーズを拾い、権利を取っていくのが知財部の役目と考えています。
当社のデザイナーたちがお客様目線で考えぬき、様々な工夫を凝らして制作しているデザインですので、もちろんその意匠権を守りたいという思いがあります。また、この制度は登録にあたって特許庁から公表されますし、内装意匠の制度が始まったばかりで世の中の注目度も高いと思いますので、多くの方々に楽天モバイルショップのこだわりを知ってもらうきっかけになれば嬉しいです。
今後の楽天モバイル知財部の取り組みについて教えてください。
今後も出願できそうな意匠の創作が出てきたら、ぜひ登録を目指して出願して行きたいと考えています。また、デザイナーは、スマートフォンやWi-Fiルーターなどのお客様の生活の一部となる製品に関して、特にこだわりを持ってデザインしているので、引き続き社内でコミュニケーションをとりながら、知財部としてサポートしていきたいです。
(注)電気通信事業用店舗の内装として日本国での意匠登録第一号
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オリジナル製品を含めた幅広い製品ラインアップを展開しています。