MWC 2025 で革新的な次世代通信技術を公開:AI、Open RAN で通信の未来を切り拓く

2025年3月、楽天グループは、スペインのバルセロナで開催された世界最大の携帯関連見本市「MWC Barcelona 2025(以下「MWC 2025」)」に出展しました。今回は、楽天モバイルが「楽天ブース」にてご紹介した、Open RANやRIC(RAN Intelligent Controller)、エッジクラウド、AIといった最新技術の検証やそれを活用した取り組みについて、詳しく解説します。

「MWC 2025」での講演の様子

■エッジクラウド:AI でデータセンターの省エネを実現 - 地球にも優しい技術

楽天モバイルは、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー))に採択された研究開発プロジェクト(注1)の一環としてエッジクラウドの高度化技術について研究開発に取り組んでいます。プロジェクトの進捗状況を見るステージゲート評価(注2)において、2024年は最高評価である「S」評価を獲得しています。

「MWC 2025」では、プロジェクトの概要と、開発された機能の一部である「Energy Saving Solution」、その中でも特に「Power Tuning」という機能に焦点を当てて発表しました。

データセンターは、現代社会に関して、インターネットサービスやクラウドサービスを支える重要なインフラですが、その消費電力が非常に大きいという課題があります。「Energy Saving Solution」は、AIを活用してデータセンターのエネルギー消費を最適化することができるソリューションです。特にその機能の一部である「Power Tuning」は、データ処理を行うサーバー(ノード)の電力消費を細かく調整することができます。通信速度などのパフォーマンスを落とすことなく省エネを実現できる点が大きな特徴で、実証実験では最大20%の省エネ効果が確認できました。楽天モバイルは、2026年3月末までの商用導入を目指しています。

エッジクラウドの研究開発に関して、楽天モバイルは、世界初(注3)となる完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワークを商用環境において構築・運用した実績を生かして、以下の3つのテーマに取り組んでいます。これらの技術開発を通じて、より効率的で持続可能なモバイルネットワークの実現を目指します。

  • エッジデータファブリック(注4)の機能強化:必要な時に必要な場所へデータを配置できる、柔軟なデータ管理技術の開発
  • エッジプラットフォームの最適化:限られたエッジクラウドのリソースを最大限に活用するための、省電力・高性能なプラットフォームの開発
  • 仮想化プラットフォームの統合運用:コンテナと仮想マシンをまとめて管理し、運用コストを削減する技術の開発
 

■RIC: Open RAN の高信頼化・インテリジェント化を推進 - 基地局を賢く最適化

また楽天モバイルは、NICTに採択された研究開発プロジェクト(注5)の一環として、RICの研究開発にも取り組んでいます(注6)。「MWC 2025」では、RICに関連する2つの技術発表を行いました。本プロジェクトについても、2024年のステージゲート評価において、最高評価である「S」評価を獲得しています。

1つ目は、O-RAN RICを活用した基地局最適化ソリューションについてです。楽天モバイルの RIC/SMOプラットフォームと 米グラウンドホッグ・テクノロジーズ社の「Groundhog rApps」を連携し、基地局のセルにおけるパラメータの最適化を自動化する検証を実施しました。従来、基地局のパラメータ調整は熟練エンジニアによる手作業が必要で、時間とコストがかかっていましたが、楽天モバイルの RIC はこの作業を自動化します。本ソリューションにより、これまで熟練エンジニアが行っていた作業を効率化し、運用コスト削減が期待されます。

2つ目は、O-RAN RIC の高度なセキュリティ実装についてです。楽天モバイルは、Open RANの仕様策定を推進する国際的な標準化団体「O-RAN ALLIANCE」 が定めたセキュリティ関連の要件(WG11 要件)に準拠したフレームワークの構築に貢献しています。Non-RT RIC のインターフェースや O-Cloud 環境を保護することで、Open RAN 全体のセキュリティを大幅に向上させることが可能です。これらの取り組みは、「O-RAN ALLIANCE」のGlobal PlugFest Fall 2024 というイベントでも公表され、国際的にも高い評価を得ています。

 

 

■AI などの活用により快適な通信環境を追求して顧客エクスペリエンスを向上

さらに、先進的な通信技術やAIを活用した、楽天モバイルの通信品質向上への取り組みについても紹介しました。

楽天モバイルは、5G基地局の展開を急速に進めております。5Gネットワークの 8割超える基地局では、Massive MIMO(注7)を採用し、より広いエリアカバレッジと高速な通信速度を可能にしています。その他にも、ソフトウェア・アップグレードによる5G(Sub 6)のエリア拡大や、プラチナバンド(700MHz帯)による地下や屋内の電波改善などの取り組みにより、顧客エクスペリエンスが向上しています。オリコン顧客満足度®調査では2年連続総合1位を獲得、Opensignal社のネットワークレポートでも通信品質の改善が認められており、ご契約者数の急速な拡大にもつながっています(注8、9)。 

さらに、楽天モバイルは、AI を活用したネットワークの管理・運用にも取り組んでいます。ネットワークには、お客様がいつも快適に通信できるよう、以下のような機能を導入しています。

  • ネットワークのパフォーマンスと容量の最適化: 常にネットワークの状態を監視し、ネットワークのパフォーマンスやキャパシティを自動調整します。
  • 問題の早期発見と予測: ネットワークの異常をいち早く見つけ出し、需要予測をすることで、顧客体験を最適化します。

AI を活用することで、膨大で複雑なデータの分析がしやすくなり、お客様のニーズに迅速に対応し、より快適な通信環境の提供が可能となっています。

また、楽天モバイルは、米AST SpaceMobile と提携し、2026 年第4四半期から日本国内における衛星通信サービスの提供を目指しています。これにより、国内全域のエリアをカバーし、災害時にも迅速にネットワークの応急復旧が可能になる予定です。

■楽天モバイルが切り拓く、通信の未来

「MWC 2025」 では、革新的な技術を通じてモバイル通信の未来を切り拓いてきた、楽天モバイルのこれまでの歩みや最新の取り組みについて、より詳しくご紹介することができました。楽天モバイルは、これらの技術のさらなる発展を通じてより効率的で持続可能な、そして顧客体験を重視した未来の通信インフラを構築します。さらに楽天シンフォニーなどを通じて、世界中のお客様の快適なモバイル環境の実現に今後も取り組んでいきます。

(注1)関連のお知らせ: 楽天モバイル、NICT基金事業として次世代通信に向けたエッジクラウド高度化技術に関する研究開発を開始(2023年11月17日)https://corp.mobile.rakuten.co.jp/news/media/2023/1117_01/
(注2)ステージゲート評価とは、研究開発プロジェクトの各段階(ステージ)の終了時に、その成果や進捗状況を厳格に評価するプロセスです。外部の専門家や社内の評価委員会が、技術的な実現可能性、市場性、事業性などの観点から総合的に判断し、次の段階に進むべきかどうかを決定します。
(注3)大規模商用ネットワークとして(2019年10月1日時点)/ ステラアソシエ調べ
(注4)データファブリックとは、複数の場所やデータの種類、データソースを接続して、データにアクセスするための方法を提供する、アーキテクチャ・技術です。
(注5)関連のお知らせ: 楽天モバイル、Beyond 5Gに向けてOpen RAN高度化に必要なRICに関する研究開発を開始(2023年2月28日)
https://corp.mobile.rakuten.co.jp/news/press/2023/0228_01/
(注6)RICには、リアルタイムに近い制御を行うNear-RT RICと、より長い時間軸でネットワーク全体の最適化を行うNon-RT RICの2種類があります。楽天モバイルは、両方のRICでセキュリティ対策を強化することで、より安全な Open RAN環境の実現を目指しています。
(注7)Massive MIMO(Multi Input Multiple Output)とは、数十から数百のアンテナを一カ所に集積してデータを送受信することで通信経路の安定化や高速化を図る技術です。
(注8)「2024年 オリコン顧客満足度®調査『携帯キャリア』ランキング」
https://life.oricon.co.jp/information/787/
(注9)Opensignal社が2024年11月に出したリリース「楽天モバイルは、5Gネットワークの改善により2024年初頭から新規加入者の獲得を加速させています」
https://www.opensignal.com/2024/11/27/rakuten-mobile-has-accelerated-new-subscriber-wins-since-the-beginning-of-2024-due-to-5g-network-jp

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