研究開発プロジェクトの成果がNICTから最高評価の『S』を獲得! ARグラスを用いる歩行者危険回避システムを支える技術をご紹介

楽天モバイルは2021年から2024年まで、国立大学法人東京工業大学(以下「東京工業大学」)(注1)と共同で、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)に採択された研究開発プロジェクト(注2、3、4)を実施し、このたびNICTよりプロジェクトの成果について、最高評価(注5)の「S」を獲得しました。 今回は、高評価を獲得した本プロジェクトにて開発・検証を行った、スマートシティにおける歩行者危険回避システムを可能にした技術をご紹介します。

歩行者危険回避システムを活用した実証実験について、詳しくはこちらをご覧ください。
5G×MEC!ARで歩行者の危険回避を促す実証実験
https://corp.mobile.rakuten.co.jp/blog/2024/0306_01/

Beyond 5Gモバイルネットワークで低遅延サービスを実現

まず、スマートシティを実現する通信を実証するための試験環境として、東京工業大学の大岡山キャンパスに、4Gに加え5GのSub6とミリ波による通信が可能なBeyond 5Gモバイルネットワークを構築しました。

東京工業大学に構築したBeyond 5Gモバイルネットワーク

東京工業大学に構築したBeyond 5Gモバイルネットワーク

5Gミリ波は、5Gで使用される24GHz以上の高周波数帯で、4Gや5G Sub6と比べて高速で低遅延の通信が可能ですが、高周波数のため電波の直進性が強く、障害物による減衰率が高いためカバレッジが狭くなるという課題があります。この課題を解決するために、基地局から発射されるミリ波の電波を中継してさらに遠くに飛ばせる「ミリ波アナログリピーター」をキャンパス内に複数設置したほか、受信した信号を複数の機器に分岐させる「カスケード」や、受信した信号をリレー式でつなげる「マルチホップ」といった技術を使って通信範囲を広げました。

その結果、ミリ波のカバレッジは5G周波数の中では広範囲をカバーできるSub6と同等かそれ以上になりました。

ミリ波アナログリピーターによるカバレッジ拡張

さらに、低遅延サービスの利用を可能にするために、キャンパス内に設置した基地局付近の建物(東京工業大学エッジクラウド)内に楽天モバイルMEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)(注6)サーバーを導入しました。これにより、ユーザーが使用するアプリケーションがBeyond 5Gモバイルネットワーク内の近くにあるサーバーで動作することで、低遅延の通信を実現しました。

歩行者危険回避システムを実現するMECサーバーの相互連携

スマートシティにおいて、歩行者危険回避システムを実現するために重要な役割を果たすのがデジタルツインという技術です。

デジタルツインとは、実世界の物体やシステムをサイバー空間上で緻密に再現する仮想モデルです。工場内などの閉ざされた空間で利用される従来のデジタルツインは、機器の接続数やデータ通信量が一定のため、既存のネットワークとMECサーバーを用いることで実現できましたが、スマートシティではユーザーのニーズが多様かつ頻繁に変化します。このような環境でのデジタルツインの実現には、高速かつ低遅延のネットワークだけでなく、ユーザーの多様なニーズへ柔軟に適応できるサーバーと、セキュリティの高いシステムの構築が必要です。

そこで本プロジェクトでは、東京工業大学エッジクラウド内にMECサーバーを分散配置することで、場所や役割に応じたデジタルツインを構築し、異なるMECサーバーをARアプリケーションが統合管理する階層型デジタルツインを実現しました。具体的には、試験環境においてスマートモビリティのデジタルツインが稼働する東京工業大学MECサーバーと、ARアプリケーションが稼働する楽天モバイルMECサーバーが相互連携可能なネットワークを構築しました。

東京工業大学ネットワークと楽天モバイルBeyond5Gネットワーク

このネットワークに接続するARグラスをかけたユーザーがキャンパス内の特定の位置に到達すると、ARアプリケーションが東京工業大学MECサーバーと連携を開始します。これにより、キャンパス内に設置した路側機で検知したセンシングデータをプライバシー保護しながら、東京工業大学MECサーバーから楽天モバイルMECサーバーを経由して、低遅延にARグラスに送信することが可能となりました。

楽天モバイルは、今後も先端技術の研究開発にて得られた知見を活用し、さらなる技術革新と社会実装を推進していくことで、より安全で便利な都市環境の構築に貢献してまいります。

(注1)東京工業大学は2024年10月1日に東京医科歯科大学と統合し、東京科学大学(Science Tokyo)となりました。
(注2)本研究成果は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の委託研究(JPJ012368C00101)により得られたものです。
(注3)楽天モバイル、東京工業大学と連携し、Beyond 5Gエッジクラウドコンピューティングに関する研究開発を開始
https://corp.mobile.rakuten.co.jp/news/press/2021/0419_01/
(注4)MECとデジタルツインを活用したARグラスを用いる歩行者危険回避システム(東京工業大学プレスリリース)
https://www.titech.ac.jp/news/2024/069878
(注5)本研究成果の評価は、本研究で得られた課題に対する研究の結果や成果、特許出願数、標準化申請・採択数、論文投稿数など、技術革新や社会発展への貢献を基に、総務省やNICTおよび評価委員に選出された大学教授による絶対評価です。また評価「S」は、令和4年度のステージゲート評価による評価結果です。
(注6)エッジコンピューティングとは端末の近くに分散配置されたサーバーでデータを処理・分析する技術です。エッジコンピューティングの領域のうち、モバイル機器に特化した技術がマルチアクセスエッジコンピューティングです。

楽天モバイルでは、新たな挑戦・革新的な
サービス創造の実現を目指し、
パートナーと共にプロジェクトを進めています。

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